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流通版 第1回「経営資源の選択と集中」 |
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今回紹介する事例は、中規模家電量販チェーン店のフランチャイジー戦略についてです。家電チェーン店は、ここ数年激しいシェア争奪戦を展開しており、なかでも「Y2K」とも呼ばれるヤマダ電機、ヨドバシカメラ、コジマの積極的な出店攻勢で、中規模店の経営は苦しい状況となっています。これらの勝ち組企業は、都心、政令都市さらに地方中核都市の中心部において規制緩和による大型店舗を次々と出店し、地域ドミナント展開する家電チェーン店のシェアを奪っています。「家電」という商品の特性上、"現物を見て購入したい"という心理が強く働くので、どうしても品揃えが充実した売り場面積の広い店舗が選択されやすいのです。そのため、大都市では15000m2、地方都市では6000m2、郊外でも3000m2以上が出店の必要条件と言われています。
このような状況で、中規模店が勝ち組企業に対抗するためには、どのような戦略が考えられるでしょうか。
シナリオとしては、
(1)専門性の高い商品に特化し、大量仕入れによるローコストオペレーションで価格競争力を持たせると共に、オリジナルブランドの開発等で差別化を図り、利益率を高める
(2)消耗品・小型商品を中心に(日用品という感覚に近いもの。距離抵抗係数が強くなるため、売り場面積による影響を受けにくい)徹底的なサービスで小商圏による地域密着を目指す
といったことが考えられます。しかし、いずれのシナリオを選択するにしても、不採算店を整理することを進めていかなければなりません。強力な競合店の出店や商圏内市場規模が小さいといった理由から、何らかの対策を講じたとしても再生が難しい店舗を閉鎖し、その資源を新規戦略に投資するためです。そのため、まず既存店の売上状況と競合店の影響力を把握するところからはじめていきたいと思います。
1−1.既存店評価と競合店影響度把握
Z電機は、首都圏を中心に大きい店舗でも3000m2程度の規模で全国的に店舗展開しています(今回分析対象にしているのは首都圏エリアの店舗です)。しかし、上述の通り好調企業による大型店の出店攻勢で業績不調に陥っています。これから、この状況を打開するための戦略を検討していきますが、まずは現状を分析してみます。以下は、首都圏におけるZ電機の店舗分布と2004年度売上実績です。
【Z電機の店舗分布】
【各店舗の売上実績】
店名 |
売場面積(m2) |
2004年度売上げ実績(千円) |
2004年度坪効率(千円) |
A店 |
594 |
533,472 |
2,964 |
B店 |
924 |
928,352 |
3,351 |
C店 |
1,320 |
693,504 |
1,734 |
D店 |
700 |
1,062,528 |
5,009 |
E店 |
1,799 |
1,265,664 |
2,322 |
F店 |
990 |
999,936 |
3,333 |
G店 |
792 |
534,336 |
2,226 |
H店 |
3,666 |
2,273,760 |
2,047 |
I店 |
1,974 |
1,411,114 |
2,359 |
J店 |
1,122 |
1,026,288 |
3,018 |
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【各店舗の売上実績グラフ(年間)】
【各店舗の坪効率グラフ(年間)】
※1坪=3.3m2として算出
これを見ると、売場面積に比例してH店の売上が最も大きくなっていますが、坪効率は相対的に高いわけではありません。都心部では、超大型店の出店が相次いでおり、3600m2程度だと逆に競争が難しくなるのかもしれません。むしろ、都心部から多少外れてはいるものの、効率よく営業展開している店舗もあります。
実際、都心部での競争は激しくなるばかりですが、実際どういう状況であるか分析してみます。次のマップは、先ほどのZ電機に加え、大型家電量販店の分布をプロットしたものです。
【競合店の分布】
このデータは、(1)年商10億円以上の企業 (2)メーカー混売店 (3)家電・PC商品の売上比率が50%以上 の大型家電量販店について、坪数(一部推定。推定不可のものは数値なし)と売上ランクが掲載されています。このデータを元に、店舗から2kmの距離を基本商圏として競合状況、つまり競合店数と競合店の売場面積合計を算出してみると、次のようになります。
→大型家電店データに関する詳しい情報はお問い合わせください
その他、小売店の競合店情報には、次のようなものがあります。
・DARMS
・日本スーパーマーケット名鑑
・SC名鑑
・ホームセンター名鑑
・ドラッグストア名鑑
・商業施設データ
・NTTタウンページ
【店舗から2km商圏の作成】
【各店舗の競合状況】
店名 |
売場面積(m2) |
競合店数 |
競合店売場面積(m2) |
A店 |
594 |
1 |
109 |
B店 |
924 |
2 |
1,271 |
C店 |
1,320 |
3 |
17,252 |
D店 |
700 |
0 |
0 |
E店 |
1,799 |
0 |
0 |
F店 |
990 |
1 |
231 |
G店 |
792 |
1 |
990 |
H店 |
3,666 |
20 |
19,374 |
I店 |
1,974 |
1 |
3,000 |
J店 |
1,122 |
2 |
1,271 |
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※競合店売場面積は一部推定値で、推定不可の店舗に数値は収録されていない。
【各店舗の競合状況グラフ】
近くにヤマダ電機、ケーズデンキ、上新電機が出店しているC店、またカメラ系量販店がひしめくH店では厳しい競合状況にあると言えます。
次回のコラムでは各店舗の市場規模と市場成長力を見ていき、エリアポートフォリオによる店舗のスクラップ&ビルドを検討したいと思います
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流通版 第1回「経営資源の選択と集中」
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