不動産版 第7回「需給バランスをみる」

arrowトップページ arrowお問い合わせ
 第7回のコラムでは、これまで集計してきた市場データを元に需給のバランスや地域ポテンシャルを分析します。駅圏域ごとの供給量に対する市場成長率からみた需給バランスの組み合わせ、駅乗降者数・市場成長率・借家世帯の所得水準といった需要ポテンシャルの組み合わせ、または持ち家世帯の所得水準・分譲価格・利回りによる地ぐらいと収益性の組み合わせを、Excelのバブルグラフを利用してエリアポートフォリオに表します。これによって、京浜東北線沿線の各駅力を視覚的に表現することができ、ポテンシャルが高い駅はどこなのか判断するための有力な材料となります。
 
(1)残存需要ポートフォリオ
<残存需要の定義について>
@潜在需要ボリュームの算出
◆総数の場合:年収500万円以上借家世帯数を潜在需要ボリュームとした
◆面積帯別の場合
  @-1 世帯人員別世帯数に持ち借区分がないため、以下の手順で借家世帯率を推計した。
・世帯人員1人の世帯数→住宅面積0〜29m2世帯数
・世帯人員2人の世帯数→住宅面積30〜49m2世帯数
・世帯人員3人の世帯数→住宅面積50〜69m2世帯数
・世帯人員4人の世帯数→住宅面積70〜99m2世帯数
・世帯人員5人の世帯数→住宅面積100m2以上世帯数
と想定した。住宅面積別世帯数は持ち家・借家別に集計されているため、この持ち借比率を対応する世帯人員別世帯数にかけることにした。
例.世帯人員2人の借家世帯数の推計 = 世帯人員2人の世帯数 × 住宅面積30〜49m2世帯数の借家比率
@-2 物件の面積帯により、ターゲット世帯を以下のように設定した。
・専有面積40m2未満の物件→世帯人員1人および2人の借家世帯数
・専有面積40〜80m2の物件→世帯人員2人および3人の借家世帯数
・専有面積80m2以上の物件→世帯人員3人以上の借家世帯数
@-3 さらに、物件の面積帯により、ターゲット年収を以下のように設定した。
・専有面積40m2未満の物件→年収500〜700万円
・専有面積40〜80m2の物件→年収700〜1000万円
・専有面積80m2以上の物件→年収1000万円以上
@-4 @-3から、借家世帯におけるターゲット年収割合(借家の年収500〜700世帯割合、借家の年収700〜1000世帯割合、借家の年収1000万円以上世帯割合)を算出。
@-5 @-2に@-4をかけて、物件面積帯別の潜在需要ボリュームとした
A残存需要の算出
◆総数の場合:2000年時点の潜在需要ボリュームから、2001〜2005年に供給された分譲戸数を引いて残存需要とした。
◆面積帯別の場合:2000年時点の面積帯別潜在需要ボリュームから、2001〜2005年に供給された面積帯別の分譲戸数を引いて、それぞれの残存需要とした。
 
分譲戸数・世帯増減率(市場成長率)・残存需要を組み合わせてエリアポートフォリオを作成します(バブルサイズは残存需要ボリュームを表します。またグラフ中の縦軸と横軸にある赤い点線は平均値になります)。
◎残存需要算出のベースとした年収別世帯数データはこちら
◎残存需要算出のベースとした国勢調査(世帯人員別世帯数、住宅面積別世帯数)はこちら
◎残存需要算出のベースとした新築分譲マンションデータはこちら
※なお、住民基本台帳では、持ち借別、また世帯人員別区分で世帯数が集計されていないため、世帯総数の増減を市場成長率と考えた。
・全戸数ベースでエリアポートフォリオを作成してみると(→グラフ(1)−1)
Aグループ:供給量は少ないが、成長率が高い
東京駅、有楽町駅、新橋駅の都心部
※都心部は高成長率であるものの、駅から1km圏域内の需要ボリュームが小さく、残存需要が少ないかマイナスになってしまう。
Bグループ:供給量が少なく、成長率も低い
日暮里駅より北側の各駅と蒲田駅。残存需要ボリュームが大きい。
Cグループ:供給量が多く、成長率も高い
浜松町駅、神田駅、秋葉原駅など都心部周辺。なお、御徒町駅や鶯谷駅、品川駅は小さいながらも残存需要がプラスである。
Dグループ:供給量は多いが、成長率が低い
大井町駅、大森駅、田町駅。残存需要ボリュームが大きい。
・面積40m2未満物件でエリアポートフォリオを作成してみると、成長率の低い地域ではあまり供給されていないことがわかる(→グラフ(1)−2)。
Aグループ→鶯谷駅、品川駅
Bグループ→郊外部全般。
Cグループ→御徒町駅から浜松町駅までの都心および都心周辺部。御徒町駅を除き、残存需要がマイナスになっている
Dグループ→田町駅。
・面積40〜80m2物件でエリアポートフォリオを作成してみると、ほとんどの圏域で残存需要がマイナスになる(→グラフ(1)−3)。
Aグループ→神田駅から浜松町駅までの都心および都心部周辺。
Bグループ→赤羽駅から日暮里駅までと蒲田駅の郊外部。日暮里駅以外は残存需要ボリュームがプラスになっている唯一のグループ。
Cグループ→鶯谷駅から秋葉原駅および品川駅の都心部周辺。残存需要のマイナスレベルが大きい。
Dグループ→西日暮里駅、田町駅と大井町駅と大森駅。残存需要のマイナスレベルが大きい。
・面積80m2以上物件でエリアポートフォリオを作成してみると、各駅圏域ごとの分譲戸数と残存需要ボリュームのバラつきが大きいことがわかる(→グラフ(1)−4)。
Aグループ→神田駅から浜松町駅までの都心および都心部周辺。神田駅、東京駅、有楽町駅は残存需要がプラスである。
Bグループ→赤羽駅から日暮里駅までと蒲田駅の郊外部。赤羽駅、東十条駅、王子駅は残存需要がプラスである。
Cグループ→鶯谷駅および品川駅の都心部周辺。品川駅の分譲戸数が飛びぬけて多い(そのため、1km圏域内の需要ボリュームと比較すると、残存需要が大きくマイナスになってしまう)。
Dグループ→西日暮里駅、上野駅、田町駅と大井町駅と大森駅。田町駅は残存需要がプラスである。

 
【分譲戸数に対する残存需要ポートフォリオ】 グラフ(1)−1


※グレーのバブルは、残存需要がマイナス(つまり地域内での供給過多)であることを意味している。
 
【面積40m2未満物件に対する残存需要ポートフォリオ】 グラフ(1)−2


 
【面積40〜80m2物件に対する残存需要ポートフォリオ】 グラフ(1)−3


 
【面積80m2以上物件に対する残存需要ポートフォリオ】 グラフ(1)−4


 
(2)需要ポテンシャル ポートフォリオ
駅乗降者数・世帯増減率(市場成長率)・借家平均年収を組み合わせて需要ポテンシャル(成長の期待度)を判断します(バブルサイズは借家世帯の平均年収を表します。またグラフ中の縦軸と横軸にある赤い点線は平均値になります)。(→グラフ(2)−1)
◎需要ポテンシャル算出のベースとした駅乗降者数はこちら
◎需要ポテンシャル算出のベースとした年収別世帯数データはこちら
※横軸を駅乗降者数の増減率にすると、より成長性を把握することができます。
 
Aグループ:駅乗降者数は少ないが、成長率が高い
→鶯谷駅、御徒町駅、神田駅の都心部周辺。このグループでは神田駅の借家世帯年収レベルが非常に高い。
Bグループ:駅乗降者数が少なく、成長率も低い
→日暮里駅より北側の各駅と田町駅、大井町駅、大森駅。
Cグループ:駅乗降者数が多く、成長率も高い
→秋葉原駅と東京駅から浜松町駅、および品川駅の都心部と都心部周辺。借家世帯年収レベルが高い。
Dグループ:駅乗降者数は多いが、成長率が低い
→上野駅、蒲田駅、西日暮里駅。

 
【需要ポテンシャルポートフォリオ】 グラフ(2)−1

 
(3)土地ポテンシャル ポートフォリオ
 持ち家世帯年収・分譲坪単価・利回り、つまり地ぐらいと収益性を組み合わせて土地ポテンシャルを判断します(バブルサイズは借家世帯の平均年収を表します。またグラフ中の縦軸と横軸にある赤い点線は平均値になります)。
◎土地ポテンシャル算出のベースとした年収別世帯数データはこちら
◎土地ポテンシャル算出のベースとした新築分譲マンションデータはこちら
◎土地ポテンシャル算出のベースとした賃料データはこちら

・全戸数ベースでポートフォリオを作成してみると、Bグループ(郊外部)とCグループ(都心部)に大きく2分されることがわかる(→グラフ(3)−1)。
Aグループ:地ぐらいは低いが、坪単価水準が高い →なし
Bグループ:地ぐらいが低く、坪単価水準も低い →上野駅より北側の各駅と大井町駅より南側の各駅。東十条駅と上中里駅、鶯谷駅の利回りが高い。
Cグループ:地ぐらいが高く、坪単価水準も高い(事業主にとって価値が高い) →御徒町駅から品川駅までの都心および都心部周辺。神田駅、品川駅の利回りが高い。
Dグループ:地ぐらいは高いが、坪単価水準が低い(利回りが高ければ購入者にとって有利) →なし

・面積40m2未満物件でエリアポートフォリオを作成してみると、分譲坪単価水準が高く、バラつきが小さいことがわかる(→グラフ(3)−2)。
Aグループ→西日暮里駅、日暮里駅、大井町駅、大森駅、蒲田駅
Bグループ→赤羽駅から田端駅までと上野駅。鶯谷駅の利回りが高い。
Cグループ→御徒町駅から品川駅までの都心および都心部周辺。神田駅、品川駅の利回りが高い。東京駅、有楽町駅の利回りが高い。
Dグループ→なし。

・面積40〜80m2物件でエリアポートフォリオを作成してみると、分譲坪単価水準が低く、バラつきが大きくなってくることがわかる(→グラフ(3)−3)。
Aグループ→なし
Bグループ→上野駅より北側の各駅と大井町駅より南側の各駅。鶯谷駅と上野駅の利回りが高い。
Cグループ→秋葉原駅から品川駅までの都心および都心部周辺。神田駅、有楽町駅、品川駅の利回りが高い。
Dグループ→御徒町駅

・面積80m2以上物件でエリアポートフォリオを作成してみると、分譲坪単価水準が再び高くなり、各駅圏域ごとのばらつきがさらに大きくなることがわかる(→グラフ(3)−4)。
Aグループ→上野駅
Bグループ→鶯谷駅より北側の各駅と大井町駅より南側の各駅。
Cグループ→御徒町駅から品川駅までの都心および都心部周辺(ただし、神田駅を除く。また、東京駅と有楽町駅には、この面積帯での賃貸物件データが取得できなかったため、グラフに表示されていない)。浜松町駅、田町駅、品川駅の利回りが高い。
Dグループ→神田駅。神田駅の利回りは非常に高く、購入者にとっては有利な地域である。

【土地ポテンシャルポートフォリオ】 グラフ(3)−1


 
【土地ポテンシャルポートフォリオ(面積40u未満物件)】 グラフ(3)−2


 
【土地ポテンシャルポートフォリオ(面積40〜80u物件)】 グラフ(3)−3


 
【土地ポテンシャルポートフォリオ(面積80u以上物件)】 グラフ(3)−4


 
arrowトップページ arrowお問い合わせ
http://www.uds.co.jp/